免疫記憶と予防接種
カワウソ先生二次応答のグラフは、免疫記憶と予防接種のしくみを一度につかめる、いちばん出やすい図だよ。
30秒でつかむ
- 最初の感染(一次応答)のあと、一部のB細胞(新しいタブで開きます)やT細胞は記憶細胞として体内に残る。
- 同じ抗原に再び出会うと、記憶細胞が速く増殖し、一次応答より大きい二次応答が起こる。
- 予防接種は、弱毒化・無毒化した病原体などで一次応答を起こし、記憶細胞を先につくらせる方法である。
詳しく
一次応答と記憶細胞
ある抗原に初めて出会ったときの免疫のはたらきを一次応答と呼ぶ。一次応答では、抗原に合ったB細胞やT細胞が増殖するまでに時間がかかるため、抗体がつくられ始めるまで1週間ほどかかる。
一次応答が終わったあとも、増殖したB細胞やT細胞の一部は記憶細胞として体内に長く残る。記憶細胞は、同じ抗原にもう一度出会うまで、働かずに待機したままだ。
記憶細胞が残っていることで、体は同じ抗原をすでに「知っている」状態になる。この記憶が、次に見る二次応答の速さと大きさを生み出す。
一次応答と二次応答の抗体量の変化
同じ抗原に再び出会うと、記憶細胞がすぐに増殖し、抗体をつくり始める。この2回目以降の反応を二次応答と呼ぶ。
グラフで比べると、一次応答では抗体量が最大でも4(相対値)ほどで、増え始めるまでに1週間ほどかかる。二次応答では抗体量が最大16ほどに達し、増え始めるまでの時間も一次応答より短い。
二次応答が一次応答より速く大きいのは、抗原に合った記憶細胞がすでに体内に多く残っていて、増殖の最初の段階を省けるためである。
予防接種と血清療法
予防接種は、弱毒化・無毒化した病原体やその成分(ワクチン)をあらかじめ接種し、体に一次応答を起こさせて記憶細胞を先につくらせる方法である。実際に病気にかかる前に、二次応答が起こる体の状態をつくっておく。
予防接種で記憶細胞ができるまでには一次応答と同じく時間がかかるため、すでに発症している急な症状には間に合わないことがある。そうした場合に頼るのが、血清療法という別の方法だ。
血清療法は、ほかの生物の体内でつくられた抗体をそのまま注射し、できるだけ早く症状を抑える方法である。自分の体で記憶細胞をつくる予防接種とは異なり、できた抗体を直接補う対処である。
確認問題
確認問題(解答用紙)
スマホやタブレットで読み取ると、この問題をその場で解けます。
https://manazoo.com/science/immunological-memory-and-vaccination/?from=print#quiz
記憶細胞の役割として正しいものはどれか。
- ◯ 一度できると分裂できず、1回しか使えない
- ◯ 抗原と結びつかず、体内を巡回するだけで働かない
- ◯ 同じ抗原に再び出会うと速く増殖し、抗体をつくれるようにする
- ◯ どんな抗原にも同じように弱く反応し続ける
正解:同じ抗原に再び出会うと速く増殖し、抗体をつくれるようにする
記憶細胞は一次応答のあとに残り、同じ抗原に再び出会うと速く増殖して、一次応答より大きい二次応答を起こす。特定の抗原だけに反応し、増殖もできる。グラフで、一次応答の抗体量の最大値が4、二次応答の抗体量の最大値が16のとき、二次応答の最大値は一次応答の最大値の何倍か。
答え:____________
正解:4
二次応答の最大値16を一次応答の最大値4で割ると、16÷4=4倍になる。予防接種の説明として正しいものはどれか。
- ◯ 感染後にできた抗体をそのまま注射して症状を抑える
- ◯ 弱毒化・無毒化した病原体などを接種し、一次応答を起こして記憶細胞を先につくらせる
- ◯ 抗生物質を投与して病原体を直接殺す
- ◯ NK細胞の数を人工的に増やす
正解:弱毒化・無毒化した病原体などを接種し、一次応答を起こして記憶細胞を先につくらせる
予防接種は、弱毒化・無毒化した病原体やその成分(ワクチン)を接種し、実際にかかる前に一次応答を起こして記憶細胞を先につくらせる方法である。血清療法の説明として正しいものはどれか。
- ◯ 二次応答が起こるまでの時間をあえて長くする
- ◯ 記憶細胞の数を減らして免疫を弱める
- ◯ 弱毒化した病原体を接種して記憶細胞をつくらせる
- ◯ ほかの生物でつくられた抗体を直接注射し、できるだけ早く症状を抑える
正解:ほかの生物でつくられた抗体を直接注射し、できるだけ早く症状を抑える
血清療法は、ほかの生物の体内でつくられた抗体(新しいタブで開きます)をそのまま注射し、記憶細胞ができるのを待たずに早く症状を抑える方法である。予防接種のように記憶細胞を自分でつくるわけではない。
単元のポイント
- 記憶細胞 最初の感染のあと体内に残り、同じ抗原への二度目の反応を速くするB細胞・T細胞
- 二次応答 記憶細胞のはたらきで、一次応答より速く大きく起こる抗体生産
- 予防接種 弱毒化・無毒化した病原体などを接種し、記憶細胞を先につくらせる方法
- 血清療法 ほかの生物でつくられた抗体を直接注射し、できるだけ早く症状を抑える方法