
誘電分極
カンガルー先生不導体の中の電子は自由に動けないけれど、分子1つ1つの中では少しだけかたよれる。そのかたよりが面全体で合わさって表に出てくるよ。
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- 不導体(誘電体)は自由電子(新しいタブで開きます)をもたないが、電場をかけると分子ごとの電荷のかたよりがそろい、誘電分極が起こる。
- 誘電分極では、外部電荷に近い面に異符号、遠い面に同符号の分極電荷が現れるが、電荷そのものは移動しない。
- 箔検電器に帯電体を近づけると、金属のはく(導体)に静電誘導(新しいタブで開きます)で同符号の電荷が集まり、退け合って開く。
詳しく
誘電分極
ガラスやゴムのような不導体(絶縁体)には、導体の自由電子のように物質の中を自由に動き回れる電子がない。しかし、1つ1つの分子の中では、正の原子核と負の電子雲の位置関係がわずかに変えられる。外部から電場をかけると、分子内の正負の電荷が少しだけ反対向きにずれ、小さな電気双極子ができる。
不導体の中のすべての分子でこのかたよりの向きがそろうと、分子どうしが接する内部では隣り合う正負の電荷が打ち消し合うが、物質の両端の面だけは打ち消す相手がいないため、正味の電荷が現れる。外部電荷に近い面には外部電荷と異符号の電荷、遠い面には同符号の電荷が現れ、この現象を誘電分極という。
誘電分極を起こす不導体を誘電体と呼ぶ。静電誘導と誘電分極はどちらも帯電体に近い面に異符号、遠い面に同符号の電荷が現れる点で似ているが、静電誘導では自由電子そのものが面まで移動するのに対し、誘電分極では電荷は分子の中でわずかにずれるだけで、物質の中を移動するわけではない。
誘電分極が起きた誘電体は、近い面の異符号の電荷による引力のほうが、遠い面の同符号の電荷による斥力より強くなるため、帯電体に引き寄せられる。下敷きをこすって髪の毛を近づけたときに髪が逆立つように見えたり、帯電した棒に小さな紙片が吸い寄せられたりするのは、この誘電分極による引力が原因だ。
例題:箔検電器で静電誘導を確かめる
箔検電器は、金属の板と、そこにつながった金属のはく(薄い金属の箔)でできた道具で、物体が帯電しているかどうかを確かめるのに使う。正に帯電した棒を、板に触れさせずに近づけると、金属(導体)でできた板とはくの中で自由電子が移動し、板には負の電荷、はくには正の電荷が現れる。
はくに現れた正の電荷どうしは同符号なので退け合い、2枚のはくが開く。これは箔検電器自身が導体であるために起こる静電誘導で、帯電体を遠ざけるとはくに集まっていた電荷は元に戻り、はくは再び閉じる。はくの開き方を見ることで、近づけた物体が帯電しているかどうかを確かめられる。
同じ実験を、ガラス棒のような不導体の帯電体で行っても、はくは同じように開く。これは不導体の帯電体自身も、表面にたまった電気量を保ったまま箔検電器の金属部分に静電誘導を起こせるからだ。一方、帯電していない中性の不導体(誘電体)を近づけたときにはくが開かないのは、誘電分極では物質の中の電荷が移動せず、箔検電器に自由電子を動かす力がはたらかないためである。
なぜ誘電体は引き寄せられるのか
誘電分極で現れる近い面の電荷と遠い面の電荷は、大きさが等しく符号が逆なので、誘電体全体として見た電気量の合計は帯電の前後で0のまま変わらない。これは電気量の保存(新しいタブで開きます)と同じ考え方で、誘電分極は電気量を新しく作り出す現象ではなく、もともと物質の中にある正負の電荷の位置をわずかにずらすだけの現象だ。
それでも誘電体が帯電体に引き寄せられるのは、クーロンの法則の力が距離の2乗に反比例するためだ。帯電体に近い面の異符号の電荷がおよぼす引力は、遠い面の同符号の電荷がおよぼす斥力よりも、距離が近い分だけ強くなる。2つの面の電荷の大きさは等しくても、距離の違いによって引力が勝ち、誘電体全体としては帯電体のほうへ引き寄せられる。
静電誘導では自由電子が実際に面まで移動して集まるのに対し、誘電分極では分子1つ1つのわずかなかたよりが積み重なって面に現れるだけなので、同じ強さの電場に対しては、誘電分極のほうが現れる電荷が小さくなることが多い。それでも向き(近い面に異符号、遠い面に同符号)がそろっているため、帯電体に引き寄せられる向きは静電誘導の場合と変わらない。
確認問題
確認問題(解答用紙)
スマホやタブレットで読み取ると、この問題をその場で解けます。
https://manazoo.com/science/dielectric-polarization/?from=print#quiz
正に帯電した棒を不導体(誘電体)に近づけたとき、棒に近い面に現れる分極電荷の符号はどれか。
- ◯ 正(棒と同符号)
- ◯ 電荷は現れない
- ◯ 近い面と遠い面の両方に正の電荷
- ◯ 負(棒と異符号)
正解:負(棒と異符号)
分子内の負の電荷(新しいタブで開きます)が外部の正電荷に引かれて近い面側にかたよるので、近い面には負(棒と異符号)、遠い面には正(棒と同符号)の分極電荷が現れる。箔検電器の板に帯電体を近づけると、2枚のはくが開く。この理由として正しいものはどれか。
- ◯ はくの中の電気量が0になったため
- ◯ 静電誘導で、はくに帯電体と同符号の電荷が集まり退け合うため
- ◯ はくが帯電体に直接触れて電荷を受け取ったため
- ◯ はくが誘電分極を起こし、異符号の電荷どうしが引き合うため
正解:静電誘導で、はくに帯電体と同符号の電荷が集まり退け合うため
はくは金属(導体)なので、帯電体を近づけると自由電子が移動する静電誘導(新しいタブで開きます)が起こる。板には帯電体と異符号、はくには帯電体と同符号の電荷が集まり、はく同士は同符号で退け合って開く。電気量0の中性な誘電体に外部電場をかけて誘電分極を起こした。誘電体全体の電気量の合計は何Cか。
答え:____________
正解:0
誘電分極は分子ごとの電荷がわずかにずれるだけで、電荷が新しく生まれたり物質の外へ出ていったりしないので、誘電体全体の電気量の合計は分極の前後で0Cのまま変わらない。誘電分極を起こした誘電体が、帯電体に近い面と遠い面に大きさの等しい異符号の電荷をもつのに、全体として帯電体に引き寄せられるのはなぜか。
- ◯ 誘電体自身が帯電体と同符号に帯電するため
- ◯ 近い面の電荷の方が遠い面より大きいため
- ◯ 遠い面の電荷が途中で消えてしまうため
- ◯ クーロンの力が距離の2乗に反比例し、近い面の引力が遠い面の斥力より強いため
正解:クーロンの力が距離の2乗に反比例し、近い面の引力が遠い面の斥力より強いため
近い面と遠い面の電荷の大きさは等しいが、クーロンの力は距離の2乗に反比例するので、距離が近い面からの引力の方が遠い面からの斥力より強くなり、誘電体全体としては引き寄せられる。
単元のポイント
- 誘電分極 不導体の分子ごとの電荷がわずかにかたよる現象
- 誘電体 誘電分極を起こす不導体
- 箔検電器 帯電の有無を、はくの開閉で確かめる道具