
導体の静電誘導と静電遮蔽
カンガルー先生導体の中の自由電子は、内部の電場が0になるまで動き続ける。だから電場が0でないまま落ち着くことはないんだ。
30秒でつかむ
- 帯電体を導体に近づけると、自由電子(新しいタブで開きます)が移動して近い面に異符号、遠い面に同符号の電荷が現れる(静電誘導)。
- 静電誘導がつり合うと、導体内部の電場は常に0になり、導体の表面全体が1つの等電位面(新しいタブで開きます)になる。
- 中空の導体は、外側の誘導電荷が外部電場を打ち消すため、内部の空洞にも電場が入ってこない(静電遮蔽)。
詳しく
静電誘導と導体内部の電場
金属などの導体には、自由電子が電場の力を受けて自由に動ける。帯電した棒(帯電体)を中性の導体に近づけると、帯電体の電荷から力を受けた自由電子が導体内部を移動し、帯電体に近い面には帯電体と異符号の電荷が、遠い面には同符号の電荷が現れる。これを静電誘導という。導体全体としての電気量は変わらず、2つの面に現れる電荷の大きさは等しい。
自由電子の移動は、導体内部の電場が0になるまで続く。もし内部に電場が残っていれば、自由電子はその電場からまだ力を受けて動き続けてしまい、電荷の分布が落ち着いた状態(静電平衡)とは言えないからだ。したがって、静電平衡にある導体の内部の電場は、外部にどんな帯電体があっても常に0になる。
導体内部の電場が0ということは、導体内部のどの2点を結んでも電位差が生じないということでもある。つまり、導体の表面を含めた内部全体が1つの等電位面になる。これは棒を近づけているときに限らず、帯電体を取り除いて誘導電荷が消えた後の中性の状態でも成り立つ。
内部が空洞になっている導体(中空の導体)でも同じ仕組みが働く。外部の電場によって導体の外側の表面に誘導電荷が現れ、その誘導電荷がつくる電場が外部の電場をちょうど打ち消すため、空洞の内部には電場が入り込まない。これを静電遮蔽といい、電子機器を外部のノイズから守る金属ケースや、同軸ケーブルの網線などに利用されている。
例題:導体を近づけたときの電荷分布
正に帯電した棒を、中性の金属板にゆっくり近づける場面を考える。棒に近い側の面では自由電子が引き寄せられて負の電荷が集まり、遠い側の面では電子が不足して正の電荷が残る。板全体の電気量の合計は接触前と変わらず0のままで、近い面の負電荷と遠い面の正電荷はちょうど同じ大きさだ。
このとき板の内部を電場が通り抜けていないかを確かめると、近い面の負電荷がつくる内向きの電場と、棒の正電荷がつくる外向きの電場が、板の内部でちょうど打ち消し合っていることがわかる。遠い面の正電荷も含めて、板全体として外部の電場を内部で0にするように電荷が並んでいる。
中空の金属箱(導体でできた箱)のまわりに外部から強い電場をかけても、箱の外側の表面に誘導電荷が現れるだけで、箱の内部の空洞には電場が入らない。外部の電場を2倍、3倍と強くしても、空洞内部の電場は常に0のまま変わらない。自動車や飛行機の金属ボディが、落雷のときに中にいる人を守れるのもこの静電遮蔽の仕組みによる。
なぜ空洞の内部まで電場が届かないのか
中空の導体の外側の表面にどんな形で誘導電荷が現れるにせよ、導体という物質そのものの中では自由電子が自由に動けるので、内部の電場は必ず0になるまで誘導電荷の分布が調整される。これは箱の形や外部電場の強さによらず成り立つ条件だ。
空洞とそのまわりの導体の壁を合わせて考えると、導体の壁の中の電場が0であることと、壁の外側の誘導電荷が外部電場をちょうど打ち消すことから、壁のさらに内側にある空洞にも電場は入り込めない。外から電場がどれだけ強くなっても、誘導電荷の量がそれに応じて増減するだけで、空洞内部は常に電場0に保たれる。
身のまわりでは、電子レンジの扉の金属の網や、精密機器を包む金属ケースが静電遮蔽の考え方を利用している。接地(アース)された導体を建物に取り付けた避雷針も、落雷の電荷を安全に地面へ逃がす仕組みとして、電気の利用の場面でよく触れられる例だ。
確認問題
確認問題(解答用紙)
スマホやタブレットで読み取ると、この問題をその場で解けます。
https://manazoo.com/science/electrostatic-induction-and-shielding/?from=print#quiz
正に帯電した棒を中性の導体に近づけたとき、棒に近い面に現れる誘導電荷の符号はどれか。
- ◯ 正(棒と同符号)
- ◯ 電荷は現れない
- ◯ 負(棒と異符号)
- ◯ 近い面と遠い面の両方に正の電荷
正解:負(棒と異符号)
自由電子(新しいタブで開きます)が棒に引き寄せられて近い面に集まるので、近い面は負(棒と異符号)、遠い面は正(棒と同符号)になる。中空の導体の内部の空洞が、外部の電場を感じなくなる現象を何というか。
- ◯ 静電誘導
- ◯ 電磁誘導
- ◯ 静電遮蔽
- ◯ 誘電分極
正解:静電遮蔽
外側の誘導電荷が外部電場を打ち消すため、空洞内部の電場は常に0になる。これを静電遮蔽という。電気量0の中性の導体球に帯電体を近づけて静電誘導を起こした。導体球に現れた誘導電荷の合計は何Cか。
答え:____________
正解:0
静電誘導は自由電子が導体の中で移動するだけなので、電荷が新しく生まれることはなく、誘導電荷の合計は接触前と同じ0Cのまま。中空の導体の外側にかける電場の強さを2倍にすると、空洞内部の電場の強さはどうなるか。
- ◯ 外側と同じ大きさになる
- ◯ 2倍になる
- ◯ 1/2倍になる
- ◯ 0のまま変わらない
正解:0のまま変わらない
外側の誘導電荷の量が増えるだけで、空洞内部の電場は外部電場の強さによらず常に0のまま。
単元のポイント
- 静電誘導 帯電体に近い面に異符号、遠い面に同符号の電荷が現れる
- 導体内部の電場 電気的なつり合い(静電平衡)では常に0
- 静電遮蔽 中空の導体の内部は外部電場を感じない