
エントロピーと反応の自発性
カメレオン先生発熱だけが『進みやすさ』を決めるわけではない。散らばり方という別のものさしも覚えておこう。
30秒でつかむ
- 反応は、熱の出入り(エンタルピー)だけでなく、粒子の散らばり方(エントロピー)の変化にも影響される。
- エントロピーは粒子の散らばり方・乱雑さの度合いを表し、多くの変化はエントロピーが増える方向に自然に進みやすい。
- 硝酸アンモニウムが水に溶ける変化は吸熱だが、イオン(新しいタブで開きます)が水中に散らばってエントロピーが大きく増えるため自然に進む。
詳しく
エントロピーという別のものさし
ここまでの反応熱は、反応が発熱か吸熱かという、エネルギーの出入りに注目したものさしだった。これとは別に、粒子の散らばり方・乱雑さの度合いを表すエントロピーというものさしがある。
固体のように粒子がきちんと並んだ状態はエントロピーが小さく、気体のように粒子が自由に飛び回る状態や、イオンが水中に散らばった状態はエントロピーが大きい。
多くの変化は、全体としてエントロピーが増える方向に自然に進みやすい。発熱か吸熱かだけでは、反応が自然に(自発的に)進むかどうかを説明できない場合がある。
例:硝酸アンモニウムが水に溶ける変化
硝酸アンモニウムを水に入れると、吸熱でありながら自然に溶けていき、水温が下がる。溶ける前は、陽イオンと陰イオンが結晶の中できちんと並んだ、エントロピーの小さい状態である。
溶けたあとは、それぞれのイオンが水中に自由に散らばった、エントロピーの大きい状態になる。この散らばり方の変化が非常に大きいため、吸熱であってもこの変化は自然に進む。
このように、吸熱反応(新しいタブで開きます)や吸熱の変化であっても、粒子の散らばり方が大きく増える場合には、自発的に(自然に)進むことがある。保冷剤に硝酸アンモニウムが使われるのは、この性質を利用したものである。
なぜエントロピーが反応の進みやすさに関わるのか
自然界の変化は、熱の出入りだけでなく、全体としての散らばり方が増える方向に進みやすいという傾向をもつ。整った状態よりも、散らばった状態のほうが圧倒的に多くの粒子の配置のしかたがあるためである。
発熱反応はふつう自発的に進みやすいが、吸熱反応でも、粒子の散らばり方が大きく増えるなら、そのエントロピーの増加が熱を吸収する不利を上回り、自然に進むことがある。
このページで見た硝酸アンモニウムの溶解のように、エンタルピー(熱の出入り)とエントロピー(散らばり方)の両方から反応の進みやすさを考えることが、化学反応と熱・光の単元全体のまとめになる。
確認問題
確認問題(解答用紙)
スマホやタブレットで読み取ると、この問題をその場で解けます。
https://manazoo.com/science/entropy-and-spontaneous-reactions/?from=print#quiz
エントロピーが表しているものはどれか。
- ◯ 物質が吸収する光の量
- ◯ 結合エネルギーの大きさ
- ◯ 反応にかかる時間
- ◯ 粒子の散らばり方・乱雑さの度合い
正解:粒子の散らばり方・乱雑さの度合い
エントロピーは、粒子の散らばり方・乱雑さの度合いを表す量である。硝酸アンモニウムが水に溶ける変化が吸熱でも自然に進む理由として正しいものはどれか。
- ◯ イオンが水中に散らばりエントロピーが大きく増えるから
- ◯ 触媒が溶解を助けているから
- ◯ 結合エネルギーがゼロになるから
- ◯ 溶ける反応は必ず発熱だから
正解:イオンが水中に散らばりエントロピーが大きく増えるから
イオン(新しいタブで開きます)が結晶から水中に散らばり、エントロピーが大きく増えるため、吸熱であってもこの変化は自然に進む。一般に、エントロピーが大きいのはどちらの状態か。
- ◯ 粒子が自由に散らばった気体や水溶液の状態
- ◯ 粒子がきちんと並んだ固体の状態
正解:粒子が自由に散らばった気体や水溶液の状態
粒子が自由に散らばった気体や水溶液の状態は、粒子がきちんと並んだ固体の状態よりエントロピーが大きい。吸熱反応でも自然に進むことがあるのはどんな場合か。
- ◯ 触媒が使われている場合だけ
- ◯ 粒子の散らばり方(エントロピー)が大きく増える場合
- ◯ 発熱反応と同時に起こる場合だけ
- ◯ 反応速度が非常に速い場合
正解:粒子の散らばり方(エントロピー)が大きく増える場合
粒子の散らばり方(エントロピー)が大きく増える場合は、吸熱反応(新しいタブで開きます)でも自然に進むことがある。
単元のポイント
- エントロピー 粒子の散らばり方・乱雑さの度合いを表す量。大きいほど散らばった状態
- エントロピー増大の方向 多くの変化は、全体としてエントロピーが増える方向に自然に進みやすい
- 吸熱でも自発的に進む例 硝酸アンモニウムの水への溶解。吸熱だがイオンが水中に散らばりエントロピーが大きく増えるため進む