
電子の比電荷
カンガルー先生まず電場と磁場の力をつり合わせて速さv=E/Bを求め、次に磁場を切って電場だけで曲げる。曲がった量yから比電荷e/mが求まるよ。
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- 電子1個の電気量(新しいタブで開きます)e(大きさ)と質量mの比e/mを比電荷という。トムソンは電場と磁場を組み合わせた装置でこれを測定した。
- 平行板による電場Eと垂直な磁場Bを同時にかけ、力がつり合って直進する条件はeE=evBで、速さはv=E/Bと求まる(eが消えるので比電荷が未知でも速さが決まる)。
- 磁場を切って電場だけにすると、電子は等加速度(新しいタブで開きます)で偏向板側へ曲がる。長さLを通る間の偏向yを測ると、e/m=2yv²/(EL²)から比電荷が求まる。
詳しく
電場と磁場で速さをそろえる
トムソンの装置では、真空放電管(新しいタブで開きます)の中を速さで進む電子の流れに、上下の平行板による電場(上の板を+極にして下向きにかける)と、それに垂直な磁場(紙面に垂直・表から裏へ)を同時にかける。
電場による力は、負の電気を持つ電子を上の+極板へ引く向き(上向き)に大きさ(は電子の電気量の大きさ)で働く。磁場による力は、電子の進む向きと磁場の両方に垂直な向き(下向き)に大きさで働く。
電場の強さと磁場の強さを調節し、ビームが曲がらずに直進するようにすると、上向きの力と下向きの力がつり合っている。より、。この式には電子の電気量が出てこないので、比電荷を知らなくても電子の速さが決まる。
例題:比電荷e/mを求める
例題:電場E=3.0×10⁴V/m、磁場B=1.0×10⁻³Tで電子ビームが直進した。まず電子の速さはいくらか。3.0×10⁷m/s。
次に磁場を切り、同じ電場E=3.0×10⁴V/mだけをかけたところ、長さL=5.0×10⁻²mの偏向板を通る間にy=5.0×10⁻³m曲がった。比電荷e/mはいくらか。板を通る時間はで、その間だけ加速度で曲がる。tを消去して整理すると。
数値を入れると、1.2×10¹¹C/kg。実際に測定される電子の比電荷は約1.8×10¹¹C/kgで、この例題は装置の仕組みを確かめるための値である。
なぜ比電荷から「電子はすべての物質に共通」と分かるのか
トムソンがこの実験で重要だと考えたのは、e/mの値そのものよりも、陰極の金属や管の中の気体をどれに変えても、求まるe/mの値がいつも同じだったという事実である。
もし陰極線(新しいタブで開きます)の正体が物質ごとに違う粒子なら、e/mも物質ごとに違う値になるはずである。実際にはいつも同じ値になったので、陰極線をつくる粒子(電子)は、どんな原子にも共通して含まれていると結論できる。
のちに電気素量e自体の値がミリカンの実験(次のページ「電気素量の測定(新しいタブで開きます)」)で単独に測定され、比電荷e/mと組み合わせることで、電子の質量mも求められるようになった(m=e÷(e/m))。
確認問題
確認問題(解答用紙)
スマホやタブレットで読み取ると、この問題をその場で解けます。
https://manazoo.com/science/specific-charge-of-electron/?from=print#quiz
電場E=4.0×10⁴V/m、磁場B=2.0×10⁻³Tを同時にかけたとき、電子ビームが直進した。このときの電子の速さvはいくらか。
答え:____________
正解:2.0×10⁷m/s
力のつり合い(新しいタブで開きます)eE=evBより、v=E/B=4.0×10⁴÷2.0×10⁻³=2.0×10⁷m/s。速さ2.0×10⁷m/sの電子ビームに、磁場を切って電場E=4.0×10⁴V/mだけをかけたところ、長さL=4.0×10⁻²mの偏向板を通る間にy=4.0×10⁻³m曲がった。このときの比電荷e/mはいくらか。
答え:____________
正解:5.0×10¹⁰C/kg
e/m=2yv²/(EL²)=(2×4.0×10⁻³×(2.0×10⁷)²)÷(4.0×10⁴×(4.0×10⁻²)²)=5.0×10¹⁰C/kg。トムソンの実験で、陰極の金属や管内の気体を変えても比電荷e/mの値が変わらなかったことは何を示すか。
- ◯ 比電荷は金属の種類によって大きく異なること
- ◯ 陰極線は電気を持たないこと
- ◯ 磁場の強さによって電子の質量が変わること
- ◯ 電子はどの原子にも共通する同じ粒子であること
正解:電子はどの原子にも共通する同じ粒子であること
e/mが物質によらず一定だったことから、陰極線(新しいタブで開きます)をつくる粒子(電子)はすべての物質に共通すると分かる。電子の比電荷をe/m=1.8×10¹¹C/kg、電気素量をe=1.6×10⁻¹⁹Cとして、電子の質量mを求めよ。
答え:____________
正解:8.9×10⁻³¹kg
m=e÷(e/m)=1.6×10⁻¹⁹÷1.8×10¹¹=8.9×10⁻³¹kg。
単元のポイント
- 比電荷 e/m(電気量÷質量)。電子では約1.8×10¹¹C/kg
- 速さを求める条件 電場と磁場の力がつり合う(直進):eE=evB → v=E/B
- 比電荷を求める式 磁場を切り、電場だけで偏向y:e/m=2yv²/(EL²)
- 分かること e/mはどの気体・金属を使っても同じ値になる→電子はすべての物質に共通する粒子