
ルシャトリエの原理と平衡の移動
カメレオン先生平衡の移動は「変化をやわらげる方向」と覚えればいい。濃度を増やせば減らす方向、圧力を上げれば分子数が減る方向、温度を上げれば吸熱方向に動くよ。
30秒でつかむ
- 平衡状態にある系に外から変化(濃度・圧力・温度の変化)を与えると、その変化をやわらげる方向に平衡が移動する(ルシャトリエの原理)。
- 濃度を増やすとその物質を減らす方向、圧力を上げると気体分子(新しいタブで開きます)の数が少なくなる方向、温度を上げると吸熱方向に平衡が移動する。
- 触媒は正反応(新しいタブで開きます)・逆反応の両方の速さを同じ比率で大きくするだけで、平衡が移動する方向には影響しない(平衡に達するまでの時間が短くなるだけ)。
詳しく
ルシャトリエの原理:変化をやわらげる方向へ
平衡状態にある可逆反応の条件(濃度・圧力・温度)を変化させると、平衡はその変化をやわらげる方向に移動し、新しい平衡状態になる。この規則がルシャトリエの原理だ。
濃度を変える場合:ある物質の濃度を増やすと、その物質を消費する方向(減らす方向)に平衡が移動する。反対にある物質を取り除くと、その物質を補う方向へ平衡は動く。
圧力を変える場合:気体が関わる反応で全体の圧力を上げる(体積を小さくする)と、気体分子の総数(係数(新しいタブで開きます)の合計)が少なくなる方向に平衡が移動する。圧力を下げると、気体分子の総数が多くなる方向へ動く。両辺の気体分子の総数が等しい反応(例:H₂+I₂⇄2HI)では、圧力を変えても平衡は移動しない。
例:N₂+3H₂⇄2NH₃の平衡を圧力と温度で動かす
アンモニアの合成反応N₂+3H₂⇄2NH₃(正反応は発熱反応(新しいタブで開きます))を例に考えよう。反応式の左辺は気体分子が1+3=4個、右辺は2個なので、気体分子の総数は右へ進むほど少なくなる。
この平衡状態の混合気体の圧力を上げると、ルシャトリエの原理により気体分子の総数が少ない右側(NH₃が増える方向)に平衡が移動する。反対に圧力を下げると、左側(N₂・H₂が増える方向)へ動く。
温度を変える場合:正反応が発熱反応なので、温度を上げると熱を吸収する方向(逆反応・NH₃が減る方向)に平衡が移動し、温度を下げると熱を放出する方向(正反応・NH₃が増える方向)に移動する。つまりアンモニアを多く作るには、圧力は高く、温度は低いほうが平衡の位置としては有利だ。
なぜ触媒は平衡の位置を変えないのか
触媒は正反応・逆反応どちらの活性化エネルギー(新しいタブで開きます)も同じように下げ、両方向の反応の速さを同じ比率で大きくする。平衡状態では正反応と逆反応の速さがすでにつり合っているので、両方が同じ比率で速くなっても、そのつり合いの位置(平衡時の物質量の比)そのものは変わらない。
つまり触媒を使ってもK(平衡定数(新しいタブで開きます))の値は変わらず、平衡が移動する方向にも影響しない。触媒の役割は、平衡に達するまでの時間を短くすることだけだ。
この性質があるから、工業的にアンモニアを合成するときも、平衡の位置(どれだけNH₃ができるか)は圧力・温度だけで決まり、触媒は反応を速く進めるためだけに使われる。この関係は次のページ「アンモニアの工業的製法(新しいタブで開きます)」でくわしく見る。
確認問題
確認問題(解答用紙)
スマホやタブレットで読み取ると、この問題をその場で解けます。
https://manazoo.com/science/le-chateliers-principle-and-equilibrium-shift/?from=print#quiz
ルシャトリエの原理とはどのような規則か。
- ◯ 平衡状態の系に変化を与えると、その変化をやわらげる方向に平衡が移動する
- ◯ 平衡状態は決して変化しない
- ◯ 触媒を使うと平衡の位置が変わる
- ◯ 温度を変えても平衡は移動しない
正解:平衡状態の系に変化を与えると、その変化をやわらげる方向に平衡が移動する
ルシャトリエの原理は、平衡状態の系に濃度・圧力・温度などの変化を与えると、その変化をやわらげる方向に平衡が移動するという規則である。平衡状態のH₂+I₂⇄2HIの混合気体にH₂を追加すると、平衡はどちらに移動するか。
- ◯ HIが増える方向(右)
- ◯ H₂・I₂が増える方向(左)
- ◯ 反応が完全に止まる
- ◯ 移動しない
正解:HIが増える方向(右)
ある物質の濃度を増やすと、その変化(濃度の増加)をやわらげるようにその物質を消費する方向に平衡が移動する。H₂を追加すると、H₂を消費する方向、つまりHIが増える方向(右)に平衡が移動する。平衡状態の2SO₂+O₂⇄2SO₃の混合気体の体積を半分にして圧力を上げると、平衡はどちらに移動するか。
- ◯ SO₃が増える方向(右)
- ◯ SO₂・O₂が増える方向(左)
- ◯ 反応が完全に止まる
- ◯ 移動しない
正解:SO₃が増える方向(右)
左辺の気体分子(新しいタブで開きます)の総数は2+1=3、右辺は2なので、圧力を上げると分子数が少ない右側(SO₃が増える方向)に平衡が移動する。N₂O₄⇄2NO₂(正反応は吸熱反応)の平衡状態の混合気体の温度を上げると、平衡はどちらに移動するか。
- ◯ 移動しない
- ◯ N₂O₄が増える方向(逆反応の方向)
- ◯ 必ず正反応が完全に進む
- ◯ NO₂が増える方向(正反応の方向)
正解:NO₂が増える方向(正反応の方向)
温度を上げると、その変化(温度上昇)をやわらげる吸熱方向に平衡が移動する。この反応は正反応(新しいタブで開きます)が吸熱反応(新しいタブで開きます)なので、NO₂が増える方向(正反応の方向)に移動する。触媒を加えると、平衡の位置(Kの値)はどうなるか。
- ◯ Kの値が2倍になる
- ◯ 変わらない(平衡に達する時間だけ短くなる)
- ◯ NH₃が増える方向に移動する
- ◯ NH₃が減る方向に移動する
正解:変わらない(平衡に達する時間だけ短くなる)
触媒は正反応・逆反応の速さを同じ比率で大きくするだけで、平衡の位置(Kの値)は変えない。平衡に達するまでの時間が短くなるだけである。
単元のポイント
- ルシャトリエの原理 平衡状態の系に変化を与えると、その変化をやわらげる方向に平衡が移動するという原理
- 圧力による平衡の移動 圧力を上げると、気体分子の総数が少なくなる方向に平衡が移動する
- 温度による平衡の移動 温度を上げると吸熱方向、下げると発熱方向に平衡が移動する