安全な水道水を得る化学
カメレオン先生分離と精製・中和・酸化還元という、ここまで学んだ3つの道具が、毎日の水道水の中で全部使われているよ。
30秒でつかむ
- 川から取った水は、沈殿(新しいタブで開きます)・ろ過・活性炭の吸着で濁りやにおいの元を取り除いてから配られる。
- 酸や塩基(新しいタブで開きます)の性質を使って水を中性(新しいタブで開きます)に近づけ、塩素を使った酸化還元反応(新しいタブで開きます)で病原生物を殺菌する。
- 配水の途中で菌が増えないよう、給水栓まで塩素の力が残るよう濃度(新しいタブで開きます)の基準(新しいタブで開きます)が決められている。
詳しく
沈殿・ろ過・吸着で水をきれいにする
川や湖から取った水には、泥や有機物(新しいタブで開きます)などの濁りが混ざっている。はじめに凝集剤を加えて細かい濁りをまとまった大きな粒にし、沈殿池で静かに置くと、重くなった粒が底に沈む。粒の大きさや重さの違いを利用する操作で、分離と精製で学んだ考え方の延長にある。
沈殿で取りきれない細かい粒は、砂の層に水を通すろ過で取り除く。さらに小さなにおいや色の元になる物質は、活性炭の表面にある無数の細かい孔が吸着して取り除く。活性炭は表面積が非常に大きいため、ろ過だけでは取れない微量の物質まで捉えられる。
川の水は、流れてくる途中で酸性や弱いアルカリ性に傾いていることがある。これを塩基や酸を加えて中和し、できるだけ中性に近づけておく。酸性に傾いたままの水は配水管の金属を腐食させやすいためだ。
例:塩素による殺菌と遊離残留塩素
浄水場では最後に塩素を加えて水を消毒する。塩素は水中の病原生物の成分を酸化し、はたらきを失わせて死滅させるしくみだ。塩素が電子を受け取る側、病原生物の成分が電子を失う側になる、酸化還元反応のひとつである。
消毒した直後だけでなく、家庭の給水栓に届くまでの配水管の中でも菌が増えないようにする必要がある。そのため、消毒に使った塩素の一部を、殺菌力を保ったまま水に残しておく。この残っている塩素を遊離残留塩素という。
水道法施行規則では、給水栓における水が遊離残留塩素を0.1mg/L以上保持するように塩素消毒することが決められている。病原生物に汚染されるおそれが高いときは、この基準は0.2mg/L以上に引き上げられる。
なぜ複数の操作を組み合わせるのか
沈殿・ろ過・吸着だけでは、濁りやにおいは取れても、水に混ざった病原生物までは取り除けない。逆に塩素消毒だけでは、濁った水の中に隠れた病原生物まで塩素が届きにくく、消毒の効果が弱くなってしまう。
だから浄水場では、分離と精製の考え方で濁りを減らし、中和で水質を安定させ、そのうえで酸化還元反応を使う塩素消毒で仕上げるという順番で、複数の操作を組み合わせている。どれか一つを省くと、安全な水道水にはならない。
この組み合わせ方は、物質を混ぜて終わりではなく、分けて、整えて、最後に反応させるという化学の基本の流れそのものだ。日常の水道水は、分離・中和・酸化還元(新しいタブで開きます)という3つの道具を順番に使った結果といえる。
確認問題
確認問題(解答用紙)
スマホやタブレットで読み取ると、この問題をその場で解けます。
https://manazoo.com/science/tap-water-purification-chemistry/?from=print#quiz
活性炭が水のにおいや色の元になる物質を取り除くしくみとして正しいものはどれか。
- ◯ 活性炭の表面にある無数の細かい孔に物質が吸着する
- ◯ 活性炭が水を加熱して蒸発させる
- ◯ 活性炭が物質を酸化して分解する
- ◯ 活性炭が物質を中和する
正解:活性炭の表面にある無数の細かい孔に物質が吸着する
活性炭は表面積が非常に大きく、表面の細かい孔ににおいや色の元になる物質を吸着して取り除く。水道法施行規則が定める、給水栓における水の遊離残留塩素の基準(通常時)はどれか。
- ◯ 0.1mg/L以上
- ◯ 0.5mg/L以上
- ◯ 0.05mg/L以上
- ◯ 1.0mg/L以上
正解:0.1mg/L以上
水道法施行規則第十七条では、給水栓における水が遊離残留塩素を0.1mg/L以上保持するように塩素消毒することと定められている。塩素による水道水の消毒が酸化還元反応といえる理由はどれか。
- ◯ 塩素が電子を受け取り、病原生物の成分が電子を失うから
- ◯ 塩素が水を蒸発させるから
- ◯ 塩素が泥や濁りを沈殿させるから
- ◯ 塩素が水に溶けて中性になるから
正解:塩素が電子を受け取り、病原生物の成分が電子を失うから
塩素が電子を受け取る側、病原生物の成分が電子を失う側になることで、病原生物のはたらきを失わせる酸化還元反応(新しいタブで開きます)が起こる。沈殿・ろ過・吸着だけでは安全な水道水として不十分な理由はどれか。
- ◯ 水の量が増えすぎてしまうから
- ◯ 水が凍りやすくなるから
- ◯ 濁りは減っても病原生物までは除けないから
- ◯ 水の色が濃くなってしまうから
正解:濁りは減っても病原生物までは除けないから
沈殿(新しいタブで開きます)・ろ過・吸着は濁りやにおいの元を取り除く操作で、病原生物を死滅させるには塩素による酸化還元反応が別に必要になる。
単元のポイント
- 沈殿・ろ過・吸着 泥や濁りのもとを、粒の大きさや活性炭への吸着の差で取り除く操作
- 中和 酸性やアルカリ性に傾いた水を、酸と塩基を反応させて中性に近づけること
- 塩素による殺菌 塩素が水中の病原生物の成分を酸化し、死滅させる酸化還元反応
- 遊離残留塩素 消毒後も水道水の中に残り、配水の途中で菌が増えるのを防ぐ塩素の量