
溶媒和と溶解平衡
カメレオン先生水は小さいのにとても極性の強い分子だから、イオンもいろいろな分子も取り囲んで引き離せるんだ。
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- 水分子(新しいタブで開きます)は酸素側が負・水素側が正に偏った極性分子(新しいタブで開きます)で、イオン(新しいタブで開きます)や極性分子を取り囲む水和によって結晶から引き離す。
- 極性の似た物質どうしは溶けやすい(水とエタノール)が、極性が大きく違う物質どうしは溶けにくい(水とヨウ素)。
- 固体が溶ける速さと、溶けた粒子が結晶に戻る速さが等しくなると、見かけの量が変わらない溶解平衡(飽和)になる。
詳しく
水分子による水和のしくみ
水分子H₂Oは、酸素原子のほうに電子が強く引かれているため、酸素側がわずかに負、2個の水素側がわずかに正に偏った極性分子である。塩化ナトリウムNaClのようなイオン結晶(新しいタブで開きます)を水に入れると、水分子は負に偏った酸素を陽イオンNa⁺へ、正に偏った水素を陰イオンCl⁻へ向けて、それぞれのイオンを取り囲む。
この水分子に取り囲まれる現象を水和といい、水和によってイオンどうしを結びつけていたイオン結合(新しいタブで開きます)の引力よりも、イオンと水分子の間の引力のほうが強くなると、イオンは結晶から引き離されて水中に散らばる。水中に散らばったイオンは水和イオンとして存在し、単独のイオンのままではない。
ショ糖のように電離(新しいタブで開きます)しない分子でも、分子内にOH(ヒドロキシ基)のような極性の部分を持つものは、その部分が水分子と引き合って同じように水和され、結晶から引き離されて溶ける。
例:溶けやすさは極性の近さで決まる
エタノールC₂H₅OHは、OHの部分が水と同じように水素結合(新しいタブで開きます)をつくれるため、水とどんな割合でも混じり合う。砂糖(ショ糖)も分子内に多くのOHを持つため、水によく溶ける。
一方、ヨウ素I₂は無極性分子なので、水の中に入れてもほとんど水和されず、わずかしか溶けない。ところがヨウ素はヘキサンやCCl₄のような無極性の溶媒には、分子どうしの引力が近いためよく溶ける。
このように、極性の物質は極性の溶媒(水など)に、無極性の物質は無極性の溶媒にそれぞれ溶けやすい。この経験則は「似たものどうしがよく溶ける」と言い表される。
なぜ溶解平衡が生まれるのか
固体を水に入れ始めると、結晶の表面から粒子が水和されて溶け出す一方で、溶液中の粒子の一部は結晶の表面にぶつかって再び結晶に組み込まれる。溶け始めは溶け出す粒子の数のほうが圧倒的に多いので、見かけ上どんどん溶けていく。
溶液中の粒子が増えるほど、結晶に戻る粒子の数も増えていく。やがて、溶け出す速さと結晶に戻る速さがちょうど等しくなると、溶液中の粒子の量は見かけ上変化しなくなる。この状態を溶解平衡といい、このときの溶液を飽和水溶液という。
溶解平衡は粒子の移動が止まった状態ではなく、溶け出す粒子と戻る粒子が同じ速さで動き続けている動的な平衡である。次のページで見る固体の溶解度は、この溶解平衡がどの温度でどれだけの量で成り立つかを表したものになる。
確認問題
確認問題(解答用紙)
スマホやタブレットで読み取ると、この問題をその場で解けます。
https://manazoo.com/science/solvation-and-dissolution-equilibrium/?from=print#quiz
塩化ナトリウムの結晶が水に溶けるとき、水分子がイオンを取り囲む向きはどれか。
- ◯ 水分子はイオンを取り囲まず、イオンだけが移動する
- ◯ 酸素側をNa⁺に、水素側をCl⁻に向ける
- ◯ 酸素側をCl⁻に、水素側をNa⁺に向ける
- ◯ 水分子は向きを変えずにイオンを取り囲む
正解:酸素側をNa⁺に、水素側をCl⁻に向ける
水分子(新しいタブで開きます)は酸素側が負、水素側が正に偏った極性分子(新しいタブで開きます)なので、負に偏った酸素を陽イオン(新しいタブで開きます)Na⁺へ、正に偏った水素を陰イオンCl⁻へ向けて取り囲む。無極性分子のヨウ素I₂は、水とヘキサンのどちらによく溶けるか。その理由として正しいものはどれか。
- ◯ どちらにも溶けない。ヨウ素は固体だから
- ◯ 水によく溶ける。水は分子が小さいから
- ◯ ヘキサンによく溶ける。無極性分子どうしは引力が近く溶けやすいから
- ◯ どちらにも同じくらい溶ける。極性は溶けやすさに関係しないから
正解:ヘキサンによく溶ける。無極性分子どうしは引力が近く溶けやすいから
極性の物質は極性の溶媒に、無極性の物質は無極性の溶媒に溶けやすい。無極性分子のヨウ素は、同じく無極性のヘキサンによく溶け、極性の水にはほとんど溶けない。溶解平衡(飽和)の状態を正しく説明しているものはどれか。
- ◯ 溶け出す速さと結晶に戻る速さが等しく、見かけの量が変わらない状態
- ◯ 粒子の移動がまったく止まった状態
- ◯ すべての溶質が完全に溶けきった状態
- ◯ 温度を上げると必ず結晶が増える状態
正解:溶け出す速さと結晶に戻る速さが等しく、見かけの量が変わらない状態
溶解平衡は、結晶から溶け出す粒子の速さと、溶液中の粒子が結晶に戻る速さがちょうど等しくなり、見かけ上溶解が止まった状態である。飽和水溶液の中で、結晶と溶液の間の粒子の動きについて正しいものはどれか。
- ◯ 溶け出す粒子と結晶に戻る粒子が同じ速さで動き続けている
- ◯ 粒子はもう結晶と溶液の間を移動していない
- ◯ 結晶に戻る粒子だけが動いている
- ◯ 溶け出す粒子だけが動いている
正解:溶け出す粒子と結晶に戻る粒子が同じ速さで動き続けている
溶解平衡は粒子の移動が止まった状態ではなく、溶け出す粒子と結晶に戻る粒子が同じ速さで動き続けている動的な平衡である。
単元のポイント
- 水和 水分子がイオンや極性分子を取り囲み、静電気的な引力で結晶や分子から引き離すこと
- 水和イオン 水和された状態のイオン。水中ではイオンは単独ではなく水分子をまとった形で存在する
- 似たものどうしがよく溶ける 極性の大きさが近い物質どうしは互いに溶けやすい(水と極性分子・無極性溶媒と無極性分子)
- 溶解平衡 溶ける速さと結晶として出てくる速さが等しくなり、見かけ上溶解が止まった状態。これ以上溶けない飽和の状態