
ファンデルワールス力と水素結合
カメレオン先生分子量だけで沸点を予想して大きく外れたら、たいてい水素結合のしわざだよ。
30秒でつかむ
- 分子(新しいタブで開きます)はすべて、電子の分布が一瞬かたよってできる弱い引力で引き合う。これをファンデルワールス力という。
- 分子が大きく電子が多いほど、電子の分布はかたよりやすくなり、ファンデルワールス力は強くなる。
- F・O・Nに結びついたHをもつ分子には、ファンデルワールス力より強い水素結合も働き、沸点(新しいタブで開きます)を大きく引き上げる。
詳しく
ファンデルワールス力と水素結合
分子の中の電子は絶えず動いており、一瞬だけ分布がかたより、分子のどちらかの端にわずかな+と−が生まれることがある。このかたよりが隣の分子の電子分布も引き寄せて同じようにかたよらせ、分子どうしが弱く引き合う。この引力をファンデルワールス力という。極性(新しいタブで開きます)の無い分子どうしでも、この力ははたらく。
分子に含まれる電子の数が多いほど、電子分布はかたよりやすく、ファンデルワールス力は強くなる。分子量(新しいタブで開きます)が大きいほどファンデルワールス力が強くなるのは、このためだ。
それとは別に、フッ素・酸素・窒素のように電気陰性度が大きい原子に直接結びついたH原子は、電子を強く引かれてプラスの電気を帯びやすくなる。このHが、別の分子のF・O・Nが持つ非共有電子対(新しいタブで開きます)と強く引き合う結合を水素結合という。水素結合はファンデルワールス力より強く、通常の共有結合よりは弱い。
例:貴ガスの沸点と水の沸点のずれ
ネオンNe(分子量20、沸点−246℃)、アルゴンAr(40、−186℃)、クリプトンKr(84、−153℃)、キセノンXe(131、−108℃)は、どれも分子間力がファンデルワールス力だけの単原子分子(新しいタブで開きます)である。分子量が大きいものほど沸点が高く、ファンデルワールス力が分子の大きさで決まることがよく分かる。
ところが、水H₂O(分子量18)と硫化水素H₂S(分子量34)を比べると、分子量の小さい水の沸点100℃の方が、分子量の大きい硫化水素の沸点−60℃よりはるかに高い。アンモニアNH₃(17、−33℃)とフッ化水素HF(20、20℃)も、同じくらいの分子量の炭化水素と比べて沸点が高い。
この3つ(H₂O・NH₃・HF)は、いずれもF・O・Nに直接結びついたHを持ち、分子どうしが水素結合で強く引き合っている。ファンデルワールス力だけで決まる予想よりも、沸点が大きく跳ね上がるのはこのためだ。
なぜ沸点にこれほどの差が出るのか
沸点を決めるのは、液体の分子どうしを引き離して気体にするのに必要なエネルギーの大きさだ。分子間力が強いほど引き離しにくく、同じ熱運動(新しいタブで開きます)の激しさ(=温度)でも振り切れないため、沸点は高くなる。
ファンデルワールス力は電子の数にほぼ比例して強くなるだけなので、分子量が近ければ沸点も近い値になる。一方、水素結合はF・O・Nに直接結びついたHがあるかどうかという、構造の違いで一気に強さが変わる。だから、分子量という量的な目安だけでは説明できない跳ね上がりが起こるのだ。
イオン結晶(新しいタブで開きます)や共有結合の結晶(新しいタブで開きます)では、そもそも分子という単位が無く、結晶全体がイオン結合(新しいタブで開きます)・共有結合そのものによって支えられている(化学基礎の物質と化学結合を参照)。これらの結合は分子間力よりずっと強いため、融点・沸点は分子性の物質よりはるかに高い。
確認問題
確認問題(解答用紙)
スマホやタブレットで読み取ると、この問題をその場で解けます。
https://manazoo.com/science/intermolecular-forces-and-boiling-point/?from=print#quiz
ネオン・アルゴン・クリプトン・キセノンを、沸点の低いものから高いものの順に並べよ。
- ( )キセノン
- ( )ネオン
- ( )クリプトン
- ( )アルゴン
正解:ネオン → アルゴン → クリプトン → キセノン
単原子分子(新しいタブで開きます)の貴ガスはファンデルワールス力だけで引き合う。分子量(新しいタブで開きます)(電子の数)が大きいほどファンデルワールス力が強く沸点(新しいタブで開きます)が高いので、ネオン<アルゴン<クリプトン<キセノンの順になる。フッ化水素HF(分子量20)と塩化水素HCl(分子量36.5)では、分子量はHClの方が大きいのに、沸点はHF(約20℃)の方がHCl(約−85℃)よりはるかに高い。この理由として正しいものはどれか。
- ◯ HFの方が分子量が小さく、ファンデルワールス力が強いから
- ◯ HFはイオン結合でできているから
- ◯ HClは常温で分解してしまい、沸点を測れないから
- ◯ HFの分子どうしには、HClには無い水素結合が働くから
正解:HFの分子どうしには、HClには無い水素結合が働くから
フッ素は電気陰性度(新しいタブで開きます)が非常に大きいため、HFの分子(新しいタブで開きます)間には水素結合が働く。塩素は電気陰性度がフッ素より小さく、HCl分子間には水素結合が働かないため、分子量が大きいにもかかわらず沸点はHFより低い。水H₂O(分子量18)の沸点100℃が、分子量の近いメタンCH₄(分子量16、沸点−162℃)より圧倒的に高いのはなぜか。
- ◯ 水分子どうしには水素結合が働くが、メタンの分子間にはファンデルワールス力しか働かないから
- ◯ 水は常温で電離しているから
- ◯ 水の方が分子量が大きく、ファンデルワールス力が強いから
- ◯ メタンは気体にならないから
正解:水分子どうしには水素結合が働くが、メタンの分子間にはファンデルワールス力しか働かないから
水分子のHはOに直接結びついており、別の水分子のOの非共有電子対(新しいタブで開きます)と水素結合を作る。メタンのHはC(電気陰性度が小さい)に結びついているため水素結合は働かず、分子間力は弱いファンデルワールス力だけになる。塩化ナトリウムの融点(801℃)が、水素結合をもつ水の融点(0℃)よりもさらに高いのはなぜか。
- ◯ 水はもともと液体になりにくい物質だから
- ◯ 塩化ナトリウムの分子にも水素結合が働いているから
- ◯ 塩化ナトリウムの分子量が水より大きいから
- ◯ イオン結合は、ファンデルワールス力や水素結合よりもさらに強い結合だから
正解:イオン結合は、ファンデルワールス力や水素結合よりもさらに強い結合だから
塩化ナトリウムはNa⁺とCl⁻が強いイオン結合(新しいタブで開きます)で結びついたイオン結晶(新しいタブで開きます)で、分子間力(ファンデルワールス力や水素結合)よりもイオン結合の方がずっと強い。そのため融点は分子性の物質よりはるかに高くなる。
単元のポイント
- ファンデルワールス力 電子の分布のかたよりから生まれる、すべての分子のあいだに働く弱い引力。分子が大きいほど強い
- 水素結合 F・O・Nに直接結びついたHと、別の分子のF・O・Nの非共有電子対とのあいだに働く、ファンデルワールス力より強い引力
- 沸点の目安 分子の大きさが近ければファンデルワールス力の強さで決まるが、水素結合をもつ分子はその予想より沸点が高い
- 水・フッ化水素・アンモニア H₂O・HF・NH₃は分子量が近い物質より沸点がはるかに高く、水素結合の代表例とされる