
蒸気圧降下と沸点上昇
カメレオン先生沸点上昇も凝固点降下も、溶けている粒子の数(モル濃度ではなく質量モル濃度)だけで決まる。溶質の種類は関係ないんだ。
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- 不揮発性の溶質を溶かすと、溶媒分子(新しいタブで開きます)が表面から飛び出しにくくなり、溶液の蒸気圧(新しいタブで開きます)は純粋な溶媒より下がる(蒸気圧降下)。
- 蒸気圧が大気圧(新しいタブで開きます)と等しくなる温度が沸点(新しいタブで開きます)なので、蒸気圧が下がった溶液は溶媒より高い温度にしないと沸騰しない(沸点上昇)。
- 沸点上昇度は、溶媒1kgあたりの溶質の物質量である質量モル濃度に比例し、比例定数(モル沸点上昇)は溶媒ごとに決まっている。
詳しく
蒸気圧降下から沸点上昇へ
ショ糖のように蒸発しない(不揮発性の)溶質を水に溶かすと、液面には溶媒の水分子だけでなく溶質の粒子も並ぶため、同じ温度でも気体に飛び出せる水分子の割合が減る。その結果、溶液の蒸気圧は同じ温度の純粋な水より低くなる。これを蒸気圧降下という。
液体は、蒸気圧が外から加わる大気圧と等しくなる温度で沸騰する。蒸気圧降下によって溶液の蒸気圧は低いままなので、大気圧と等しくなるまでには純粋な溶媒より高い温度が必要だ。これが沸点上昇である。
沸点上昇度(もとの溶媒の沸点との差)は、溶媒1kgあたりに溶けている溶質の物質量である質量モル濃度〔mol/kg〕に比例する。この比例定数をモル沸点上昇(記号Kb)といい、同じ溶媒ならどんな非電解質(新しいタブで開きます)を溶かしても同じ値になる。
例:グルコースとNaClの沸点上昇
水のモル沸点上昇は0.52K・kg/molとする。グルコース(分子量(新しいタブで開きます)180)180gを水1kg(1000g)に溶かすと、物質量はmolなので、質量モル濃度は1.0mol/kgになる。沸点上昇度はKで、沸点は100.52℃だ。
NaCl(電解質)0.10molを水1kgに溶かした場合は注意が必要である。NaClは水中でNa⁺とCl⁻にすべて電離(新しいタブで開きます)するため、溶けている粒子の数は物質量の2倍になる。質量モル濃度として扱う値はmol/kgだ。
この質量モル濃度を使うと、NaCl水溶液の沸点上昇度はKとなる。同じ0.10molのグルコースなら電離しないのでKにしかならず、電離するNaClのほうが粒子数が多いので沸点上昇度は大きくなる。
なぜ溶質の種類に関係なく決まるのか
蒸気圧降下の大きさは、液面にある溶媒分子が溶質の粒子にどれだけ置き換えられているかで決まる。これは溶質が占める粒子の「個数の割合」で決まり、粒子の種類(大きさや重さ)にはほとんど関係しない。
そのため、沸点上昇度や、このあとのページで見る凝固点降下(新しいタブで開きます)度・浸透圧(新しいタブで開きます)は、溶けている溶質の粒子の数だけで決まり、溶質が何であるかには関係しない。このような性質を束一性(溶液の性質のうち溶質の種類に関係なく粒子数だけで決まるもの)という。
ただし、同じ物質量でも電離する電解質は粒子の数が増えるので、質量モル濃度を求めるときは電離後の粒子の総数で数える必要がある。モル沸点上昇Kbの値そのものは溶媒だけで決まり、溶質には関係しない。
確認問題
確認問題(解答用紙)
スマホやタブレットで読み取ると、この問題をその場で解けます。
https://manazoo.com/science/boiling-point-elevation-and-vapor-pressure-depression/?from=print#quiz
不揮発性の溶質を溶かした水溶液の蒸気圧が、同じ温度の純粋な水より低くなる理由はどれか。
- ◯ 液面で溶質の粒子が水分子の一部を置き換え、飛び出せる水分子の割合が減るため
- ◯ 溶質が水面に膜をつくり、熱を伝えなくするため
- ◯ 溶質が水分子を分解してしまうため
- ◯ 溶液のほうが温度が低いため
正解:液面で溶質の粒子が水分子の一部を置き換え、飛び出せる水分子の割合が減るため
液面には溶媒の水分子(新しいタブで開きます)だけでなく溶質の粒子も並ぶため、気体に飛び出せる水分子の割合が減り、蒸気圧(新しいタブで開きます)が純粋な水より低くなる。水のモル沸点上昇を0.52K・kg/molとする。グルコース(分子量180)72gを水800g(0.800kg)に溶かした水溶液の沸点は何℃か。小数第2位まで答えよ。
答え:____________
正解:100.26
グルコース72gは72/180=0.4molなので、質量モル濃度は0.4/0.800=0.5mol/kg。沸点上昇度は0.52×0.5=0.26Kなので、沸点(新しいタブで開きます)は100+0.26=100.26℃。同じ0.10molを水1kgに溶かしたとき、グルコース(非電解質)よりNaCl(電解質)のほうが沸点上昇度が大きくなる理由はどれか。
- ◯ NaClはNa⁺とCl⁻に電離し、溶けている粒子の数が2倍になるため
- ◯ NaClのほうが分子量が大きいため
- ◯ NaClは電流を流すため沸点が変わるため
- ◯ NaClのほうが水に溶けにくいため
正解:NaClはNa⁺とCl⁻に電離し、溶けている粒子の数が2倍になるため
NaClは水中でNa⁺とCl⁻にすべて電離(新しいタブで開きます)するため、溶けている粒子の数は物質量の2倍になる。沸点上昇度は粒子の数(質量モル濃度)で決まるので、NaClのほうが大きくなる。沸点上昇のように、溶質の種類に関係なく溶けている粒子の数だけで決まる溶液の性質を何というか。
- ◯ 束一性
- ◯ 溶解度
- ◯ 溶媒和
- ◯ 電離度
正解:束一性
沸点上昇・凝固点降下(新しいタブで開きます)・浸透圧(新しいタブで開きます)のように、溶質の種類に関係なく溶けている粒子の数だけで決まる性質を束一性という。
単元のポイント
- 蒸気圧降下 不揮発性の溶質を溶かした溶液の蒸気圧が、同じ温度の純粋な溶媒の蒸気圧より低くなること
- 沸点上昇 蒸気圧降下の結果、溶液の沸点が純粋な溶媒の沸点より高くなること
- 質量モル濃度 溶媒1kgに溶けている溶質の物質量〔mol/kg〕。温度で体積が変わっても値が変わらないので沸点・凝固点の計算に使う
- 電解質は粒子数が増える NaClのように電離する溶質は、イオンの数だけ粒子が増えるため、同じ物質量でも沸点上昇・凝固点降下が大きくなる