
電子線回折と物質波
カンガルー先生光が粒(光子)の性質を持つのと逆に、電子のような粒子にも波長λ=h/mvの波の性質があるよ。だから結晶に電子線を当てると、X線のように回折するんだ。
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- 結晶の薄い膜に電子線(新しいタブで開きます)を当てると、X線を当てたときと同じような濃淡の輪や縞模様(回折(新しいタブで開きます)模様)ができる。これは電子線が波の性質を持ち、原子で回折することを示している。
- ド・ブロイは、光が粒(光子)と波の性質を両方持つのと同じように、電子のような粒子にも波の性質があると考えた。運動量(新しいタブで開きます)p=mvの粒子に対応する波長(新しいタブで開きます)はλ=h/pで、物質波(ド・ブロイ波)という。
- 光電効果(新しいタブで開きます)(光は粒として振る舞う)と電子線回折(電子は波として振る舞う)はちょうど逆の組み合わせで、光も物質も粒子性と波動性の両方を持つことを示す。
詳しく
物質波とド・ブロイ波長
前のページ「X線の発生とX線回折(新しいタブで開きます)」で見たように、結晶にX線を当てると、原子が並ぶ面で反射したX線どうしが干渉し、特定の角度だけで強め合う回折が起こる。これはX線が波であることの証拠だった。
電子線を結晶の薄い膜に通して蛍光板に当てると、X線を結晶に当てたときと同じような、濃淡の輪や縞模様(回折模様)が現れる。粒子だと考えていた電子が、結晶の中の原子でX線と同じように回折(干渉)したことになる。
フランスの物理学者ド・ブロイは、光が波の性質(干渉・回折)と粒子の性質(光電効果での光子としての振る舞い)の両方を持つのと同じように、電子のような粒子にも波としての性質があるはずだと考えた。運動量の粒子に対応する波長(物質波・ド・ブロイ波の波長)はである。
例題:加速した電子のド・ブロイ波長
例題:電圧V=100Vで静止した電子(質量m=9.1×10⁻³¹kg、電気素量(新しいタブで開きます)e=1.6×10⁻¹⁹C)を加速した。この電子のド・ブロイ波長はいくらか(プランク定数h=6.6×10⁻³⁴J・s)。
加速によって電子が得る運動エネルギー(新しいタブで開きます)はなので、より運動量は。数値を入れると、で、kg・m/s。
ド・ブロイ波長は1.2×10⁻¹⁰m。これはX線とほぼ同じ波長で、結晶にぶつけると回折が起こる理由になっている。加速電圧を高くするほど電子の運動量は大きくなり、波長はさらに短くなる。
なぜ電子線回折は電子顕微鏡につながるのか
電子は質量を持つのでX線よりずっと小さいド・ブロイ波長を実現しやすく、電子線は原子レベルの細かい構造を観察する電子顕微鏡として利用されている。可視光の波長(約5×10⁻⁷m)では見えない、原子サイズ(約10⁻¹⁰m)の構造まで観察できるのは、電子のド・ブロイ波長がそれだけ短いからである。
光電効果が示した光の粒子性、電子線回折が示した電子の波動性は、どちらも日常の直感(光は波、電子は粒)に反する発見だった。粒子性と波動性をあわせ持つという考え方は、その後の量子論の基礎となった。
電子(「電子の発見(新しいタブで開きます)」「電子の比電荷(新しいタブで開きます)」「電気素量の測定(新しいタブで開きます)」の各ページ)、光(「光電効果と光量子仮説」「X線の発生とX線回折」の各ページ)に続き、このページ「電子線回折と物質波」は、粒子と波の境目をなくした量子論の入り口にあたる。
確認問題
確認問題(解答用紙)
スマホやタブレットで読み取ると、この問題をその場で解けます。
https://manazoo.com/science/electron-diffraction-and-matter-waves/?from=print#quiz
電圧V=400Vで加速された電子(質量m=9.1×10⁻³¹kg、電気素量e=1.6×10⁻¹⁹C)のド・ブロイ波長はいくらか(プランク定数h=6.6×10⁻³⁴J・s)。
答え:____________
正解:6.1×10⁻¹¹m
運動量(新しいタブで開きます)p=√(2meV)、波長(新しいタブで開きます)λ=h/p=6.6×10⁻³⁴÷√(2×9.1×10⁻³¹×1.6×10⁻¹⁹×400)=6.1×10⁻¹¹m。電子の加速電圧を高くすると、ド・ブロイ波長はどうなるか。
- ◯ 電子はもはや波の性質を持たなくなる
- ◯ 運動量が大きくなるので、ド・ブロイ波長は長くなる
- ◯ 運動量が大きくなるので、ド・ブロイ波長は短くなる
- ◯ 加速電圧を変えてもド・ブロイ波長は変わらない
正解:運動量が大きくなるので、ド・ブロイ波長は短くなる
λ=h/mvで、加速電圧を高くすると速さvが大きくなり運動量mvが大きくなるので、波長λは短くなる。結晶に電子線を当てたときにできる回折模様から、電子についてどのようなことが分かるか。
- ◯ 結晶は電気を通すこと
- ◯ 電子は光と同じ速さで進むこと
- ◯ 電子には波としての性質(波動性)があること
- ◯ 電子には質量がないこと
正解:電子には波としての性質(波動性)があること
X線と同じような回折(新しいタブで開きます)模様ができることから、粒子だと考えていた電子にも波としての性質があると分かる。光電効果と電子線回折の関係を正しく説明しているものはどれか。
- ◯ 光電効果は光の粒子性を示し、電子線回折は電子(粒子)の波動性を示す、ちょうど逆の組み合わせである
- ◯ 光電効果は電子の波動性を示し、電子線回折は光の粒子性を示す
- ◯ 光電効果も電子線回折も、どちらも光にだけ起こる現象である
- ◯ 光電効果と電子線回折は無関係である
正解:光電効果は光の粒子性を示し、電子線回折は電子(粒子)の波動性を示す、ちょうど逆の組み合わせである
光電効果(新しいタブで開きます)は光が粒子(光子)としてふるまうことを示し、電子線回折は電子という粒子が波としてふるまうことを示す。
単元のポイント
- 電子線回折 結晶に電子線を当てるとX線と同様の回折模様ができる現象。電子の波動性の証拠
- 物質波(ド・ブロイ波) 電子などの粒子に対応する波。波長はド・ブロイ波長λ=h/mv
- ド・ブロイ波長の式 λ=h/p=h/mv(pは運動量、hはプランク定数)
- 粒子性と波動性 光は波の性質(干渉・回折)と粒子の性質(光電効果)の両方を持ち、電子のような粒子も波の性質(電子線回折)を持つ