
融解熱・蒸発熱と加熱曲線
カメレオン先生温度が止まっている間も加熱は続いている。熱は粒子を振動させる分ではなく、粒子どうしを引きはがす分に使われているよ。
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- 固体を液体にするのに吸収する熱を融解熱、液体を気体にするのに吸収する熱を蒸発熱という(融解エンタルピー・蒸発エンタルピーとも呼ぶ)。
- 融解・沸騰(新しいタブで開きます)の間は、加えた熱がすべて粒子間の引力を振り切る分に使われるため、温度は変化せず一定に保たれる。
- 同じ物質では蒸発熱の方が融解熱よりずっと大きい。液体では残る引力を、気体ではほぼすべての引力を断ち切る必要があるため。
詳しく
融解熱・蒸発熱と温度が止まる理由
固体を加熱すると、粒子の熱運動(新しいタブで開きます)が激しくなって温度が上がる。ところが融点(新しいタブで開きます)に達すると、それ以上加熱しても固体がすべて液体になるまで温度は上がらなくなる。このとき、決まった圧力のもとで物質1molを固体から液体にするのに吸収する熱量を融解熱という。
液体をさらに加熱していくと、沸点でも同じことが起こる。沸点に達すると、液体がすべて気体になるまで温度は一定のまま止まる。このとき物質1molを液体から気体にするのに吸収する熱量を蒸発熱という。今の教科書では、同じ量をそれぞれ融解エンタルピー・蒸発エンタルピーとも呼ぶ。名前が違うだけで、指す量は同じである。
縦軸に温度、横軸に加えた熱量(または加熱時間)をとったグラフを加熱曲線という。融解・沸騰のあいだは平らな区間(プラトー)になり、そこを抜けると再び温度が上がる、という形をたどる。
例:氷を水蒸気にするまでに必要な熱量
例題:1.0molの0℃の氷を、すべて100℃の水蒸気にするには何kJの熱量が必要か。水の融解熱を6.0kJ/mol、蒸発熱を41kJ/mol、水(液体)のモル比熱(新しいタブで開きます)を75J/(mol・K)とする。
0℃で氷を融かすのに必要な熱量は、融解熱そのものなので6.0kJ。続けて0℃の水を100℃まで温めるには、モル比熱×物質量×温度変化よりJ=7.5kJ。最後に100℃で水を水蒸気にするのに必要な熱量は、蒸発熱そのものなので41kJ。
3つを合計すると54.5kJになる。このうち蒸発にかかった41kJが全体の7割以上を占めている。加熱曲線にすると、0℃と100℃の2か所に平らな区間ができ、100℃側の区間(蒸発)の方がずっと長く続く。
なぜ蒸発熱は融解熱よりずっと大きいのか
固体の中の粒子は、決まった位置で振動しているだけで、まだ多くの分子間力(新しいタブで開きます)(次のページで見るファンデルワールス力(新しいタブで開きます)や水素結合)によって互いに引き合ったままである。液体になるとき断ち切るのは、この引力の一部だけでよい。粒子は位置を自由に変えられるようになるが、液体の中でもまだ互いに引き合い続けている。
一方、液体から気体になるときは、粒子どうしをほぼ完全に引き離し、分子間力の影響がほとんど届かない距離まで遠ざけなければならない。断ち切る引力の量が多いほど、必要な熱量も大きくなる。
水の蒸発熱が41kJ/molと特に大きいのは、水分子(新しいタブで開きます)のあいだに強い水素結合が働いているからだ。もし水の分子間力がメタンCH₄程度(蒸発熱約8.2kJ/mol)しかなければ、常温でも水はすぐに蒸発してしまい、海や川として存在できない。
確認問題
確認問題(解答用紙)
スマホやタブレットで読み取ると、この問題をその場で解けます。
https://manazoo.com/science/latent-heat-of-fusion-and-vaporization/?from=print#quiz
2.0molの0℃の氷を、すべて100℃の水蒸気にするには何kJの熱量が必要か。水の融解熱を6.0kJ/mol、蒸発熱を41kJ/mol、水(液体)のモル比熱を75J/(mol・K)とする。
答え:____________
正解:109
融解に6.0×2.0=12.0kJ、0℃→100℃の加熱に75×2.0×100/1000=15.0kJ、蒸発に41×2.0=82kJ。合計12.0+15.0+82=109kJ。100℃の水蒸気2.0molが、同じ100℃の水に凝縮するとき放出する熱量は何kJか。水の蒸発熱を41kJ/molとする。
答え:____________
正解:82
凝縮は蒸発の逆の変化なので、同じ大きさの熱量を放出する。2.0mol×41kJ/mol=82kJ。水を100℃で沸騰させ続けているあいだ、温度が100℃のまま上がらないのはなぜか。
- ◯ 気体になった水分子は熱運動をやめてしまうから
- ◯ 加えた熱が、分子間の引力を振り切って気体にする分に使われ、分子の熱運動を速くする分には使われないから
- ◯ 100℃になると水はこれ以上熱を吸収できなくなるから
- ◯ 気圧が自動的に下がり、沸点も同時に下がっていくから
正解:加えた熱が、分子間の引力を振り切って気体にする分に使われ、分子の熱運動を速くする分には使われないから
沸騰(新しいタブで開きます)中に加えた熱は、液体の中で分子(新しいタブで開きます)を引き合わせている分子間力(新しいタブで開きます)を振り切って気体にする仕事(新しいタブで開きます)に使われる。分子の熱運動(新しいタブで開きます)の激しさ(=温度)を上げる分には使われないため、すべて気体になるまで温度は一定に保たれる。「融解エンタルピー」と「融解熱」の関係として正しいものはどれか。
- ◯ 融解エンタルピーは圧力に関係なく決まる量である
- ◯ 融解エンタルピーは気体から液体になるときの熱量である
- ◯ 呼び方が違うだけで、指している量は同じである
- ◯ 融解エンタルピーは融解熱よりつねに大きい、別の量である
正解:呼び方が違うだけで、指している量は同じである
融解エンタルピーは融解熱と同じ量を指す今の呼び方で、決まった圧力のもとで固体1molを液体にするのに吸収する熱量である。どちらの用語でも値は変わらない。
単元のポイント
- 融解熱(融解エンタルピー) 決まった圧力のもとで、固体1molを同じ温度の液体にするのに必要な熱量
- 蒸発熱(蒸発エンタルピー) 決まった圧力のもとで、液体1molを同じ温度の気体にするのに必要な熱量
- 加熱曲線 一定の割合で熱を加えたときの温度変化のグラフ。融解・沸騰の間は平らになる
- 蒸発熱>融解熱 気体にするには粒子間の引力をほぼ完全に断ち切る必要があり、液体にするときより多くの熱がいる